整骨院の保険請求はさらに厳しくなる?柔整療養費の審査・患者照会の今後
整骨院・接骨院の保険制度
整骨院の保険請求はさらに厳しくなる?柔整療養費の審査・患者照会の今後
2026年7月、柔道整復療養費の算定ルールや審査の考え方が見直され、 整骨院・接骨院の保険請求を取り巻く環境は大きく変わりました。
さらに2026年7月30日には、 「柔道整復師の施術の療養費の適正化への取組」や 「柔整療養費の被保険者等への照会」についても通知が改正されています。
では、今後は整骨院・接骨院の保険請求がさらに厳しくなるのでしょうか。 また、利用者への患者照会や、多部位・長期・頻回施術の審査はどのように変わっていくのでしょうか。
あわせて、ケガが落ち着いて保険施術を終えた後も身体のケアを続けたい場合、 整骨院の自費メニューを利用するのか、整体院など別の施設を選ぶのかについても解説します。
今後の改定内容や審査基準は変更される可能性があります。
結論|保険請求は「一律に厳しくなる」というより適正化が進む方向
2026年9月時点では、すべての整骨院・接骨院の保険請求が 一律に厳しくなると決まっているわけではありません。
一方で、柔道整復療養費については、 多部位・長期・頻回施術や、施術所ごとの請求傾向などを確認し、 必要な請求を重点的に審査する方向が強まっています。
厚生労働省では2026年7月の改定に加えて、 患者照会、重点審査、施術所単位の傾向審査などについても見直しを進めています。
そのため、今後は 「保険を使えるかどうか」だけではなく、「請求内容に合理的な説明ができるか」 がより重要になっていくと考えられます。
また、ケガが落ち着いて保険施術を終えた後も身体のケアを続けたい場合は、 保険を使い続けることを前提にするのではなく、 自費施術として整骨院・整体院などを改めて比較するという考え方もあります。
2026年7月に何が変わった?
2026年7月には、柔道整復療養費について複数の見直しが行われました。
代表的なものとして、
- 2部位目への逓減の導入
- 初検料などの算定要件の見直し
- 長期・多部位施術への対応強化
- 重点審査項目の見直し
- 患者照会・適正化に関する通知の改正
などがあります。
さらに2026年7月30日には、 厚生労働省から 「柔道整復師の施術の療養費の適正化への取組について」 および 「柔整療養費の被保険者等への照会について」 の一部改正が公表されました。
2026年7月改定は料金だけの変更ではなく、 審査・患者照会・適正化まで含めた制度全体の見直しとして見ることが重要です。
患者照会とは?
患者照会とは、 健康保険組合や協会けんぽ、市区町村などの保険者が、 柔道整復療養費の請求内容について利用者本人へ確認することです。
たとえば、
- いつ、どのようにケガをしたのか
- どの部位に施術を受けたのか
- 何回くらい通院したのか
- 施術内容や窓口で支払った金額
などについて確認されることがあります。
これは、施術所から提出された申請内容と、 利用者が実際に受けた施術内容が一致しているかを確認するために行われます。
なぜ患者照会が行われるの?
柔道整復療養費は公的な医療保険から支払われるため、 請求内容が適切かどうかを確認する必要があります。
特に、請求内容だけでは負傷原因や施術の必要性が分かりにくい場合、 保険者が利用者本人へ確認することがあります。
2026年の柔道整復療養費検討専門委員会では、 患者照会についても、単純に「多部位」「長期」「頻回」という数字だけを見るのではなく、 施術所ごとの請求傾向などを分析して、 より重点的に確認する方向が議論されています。
今後、重点審査されやすいケース
厚生労働省の検討では、 従来の患者単位だけでなく、 施術所ごとの請求傾向を分析すること も重視されています。
たとえば、
- 同じ負傷名・負傷原因・負傷部位の患者が多数いる
- 複数部位を同時に負傷した患者が多い
- 複数の負傷部位が同じ日に治癒となる患者が多い
- 治癒した翌月に別の部位を負傷するケースが繰り返されている
- 3部位以上の施術が多い
- 3か月を超える施術が多い
- 月10回以上など頻回な施術が多い
といった傾向について、 縦覧点検や傾向審査などを通じて確認する考え方が示されています。
これらに該当するだけで「不正請求」と判断されるわけではありません。 あくまで、詳しく確認する必要があるケースを抽出するための考え方です。
長期・多部位施術への審査はどう変わる?
2026年度の見直しでは、 異なる負傷が繰り返し発生することで、 結果として施術期間が長く、施術部位数が多くなるケースへの対応が強化されています。
厚生労働省の専門委員会では、 直近1年間に通算8か月以上、かつ通算9部位以上の施術を受けている患者 を新たな重点審査の対象として位置づける考えが示されています。
こうしたケースでは、 長期間にわたり複数の負傷を繰り返している理由や、 保険施術としての妥当性をより詳しく確認することになります。
ただし、本当に複数の負傷が発生している利用者もいるため、 単純に数字だけで判断するのではなく、 実際の負傷状況や必要な施術を考慮することも重要とされています。
「長期かつ頻回」の基準は今後変わる?
現在、柔道整復療養費では、 「5か月を超え、かつ月10回以上」の施術について 長期かつ頻回の施術として扱われる基準があります。
2026年4月の柔道整復療養費検討専門委員会では、 この基準の置き方についても 今後引き続き検討する事項 とされています。
そのため、 将来的には現在の回数や期間の基準が変更される可能性があります。
具体的に「月○回へ変更する」などの新しい基準が決定しているわけではありません。
「部位転がし」とは?
柔道整復療養費の議論で近年よく登場する言葉が 「部位転がし」です。
これは、一つの負傷が治癒した後、 別の部位を新たな負傷として繰り返し請求することで、 長期間にわたり保険請求が続くようなケースを指す際に使われています。
2026年の専門委員会では、 同じ患者について 「数か月施術して治癒 → 翌月に別の部位を新たに負傷」 といった請求パターンが繰り返されるケースについて議論されています。
こうしたパターンを施術所単位で分析し、 必要に応じて重点的に審査する方向が示されています。
一方で、新しい負傷が実際に発生することもあるため、 負傷部位が変わっただけで不正と判断されるわけではありません。
利用者にはどんな影響がある?
利用者にとって最も直接的な影響は、 保険者から施術内容について確認の連絡や書面が届く可能性があることです。
患者照会が届いた場合は、 整骨院・接骨院に任せきりにせず、 自分が実際に受けた施術内容や負傷原因を確認したうえで回答することが大切です。
また、施術所でもらった明細書や領収書を保管しておくと、 後から確認するときに役立ちます。
患者照会=その利用者が不正を疑われている、という意味ではありません。
保険請求の内容を確認するための手続きとして行われる場合があります。
保険施術が終わった後はどうする?自費施術や整体院も選択肢に
ケガの状態が落ち着き、柔道整復療養費の対象となる施術を終えた後でも、 「身体の張りが気になる」 「全身を整えてほしい」 「仕事や日常生活による肩こり・腰の疲れをケアしたい」 と考える人もいるでしょう。
こうした場合は、健康保険を使い続けることを前提にするのではなく、 自費施術として身体のケアを受ける という選択肢があります。
そのまま通っている整骨院・接骨院の自費メニューを利用する方法もありますが、 整体院やリラクゼーション施設などを含めて、 改めて自分の目的に合う施設を探してみるのも一つの方法です。
保険施術と自費施術では目的や考え方が異なる
整骨院・接骨院で健康保険の対象となる柔道整復療養費は、 肩こりや身体の疲れ、全身のメンテナンスなどに 自由に利用できる制度ではありません。
一方、自費施術では健康保険の対象範囲に限定されないため、 施設によっては特定の負傷部位だけではなく、 全身の状態を確認しながら施術を行っているところもあります。
「保険が使えるところを探す」のではなく、 保険施術が必要な時期と、自費で身体をケアする時期を 分けて考えることも大切です。
自費へ移行するなら、他の整体院とも比較してみよう
整骨院・接骨院で保険施術を受けていたからといって、 自費施術へ移行するときも必ず同じ施設へ通い続けなければならないわけではありません。
自費になるのであれば、 料金だけではなく、 施術時間、施術内容、担当者の経験、得意分野、通院方法などを確認し、 他の整体院や自費施術を提供する施設と比較してから選ぶ のもよいでしょう。
たとえば、これまでは負傷した部位を中心に施術を受けていたものの、 今後は身体全体を見てもらいたいという場合には、 全身の状態を確認したうえで施術を行っている整体院などを探す方法もあります。
特に自費施術では、 「整骨院」「整体院」という施設名だけでサービス内容を判断するのではなく、 実際にどのような施術を受けられるのか を確認することが重要です。
自費施術へ移行するときに確認したいポイント
- 気になる部位だけでなく全身の状態も確認してくれるか
- 実際の施術時間はどのくらいか
- どのような施術を行うのか説明されているか
- 施術者の経歴や経験が公開されているか
- 自分が受けたい施術や目的と合っているか
- 初回だけでなく2回目以降の料金も明確か
- 都度払いでも利用できるか
- 回数券や会員制度の総額・条件が分かりやすいか
- 高額な契約や必要以上の通院をその場で急かされないか
整骨院・接骨院にも自費施術に力を入れている施設がありますし、 整体院にもそれぞれ異なる施術方針があります。
そのため、 「整骨院だから安心」「整体院だから全身を見てくれる」 と施設名だけで判断するのではなく、 誰が、どのような施術を、どのくらいの時間・料金で提供しているのか を比較して選ぶことが大切です。
整骨院の自費メニューをそのまま契約する必要はない
保険施術を受けていた整骨院から、 ケガが落ち着いた後に骨盤矯正、姿勢改善、整体、コンディショニングなどの 自費メニューを案内されることもあります。
内容や料金に納得できるのであれば、 そのまま同じ施設で自費施術を受けることも選択肢の一つです。
ただし、自費施術になれば、 他の整体院やリラクゼーション施設などと同じように 施術内容・時間・料金・施術者・契約条件を比較して選ぶことができます。
「これまで保険で通っていたから」という理由だけで決めず、 今後どのような身体のケアを受けたいのかを考えたうえで選択するとよいでしょう。
強い痛みが続いている、しびれや筋力低下がある、 症状が悪化している、原因が分からない症状が続いているなどの場合は、 整体などの自費施術だけで対応しようとせず、 医療機関へ相談することも検討してください。
整骨院・接骨院にはどんな影響がある?
今後、施術所側では、 単に申請書を正しく記載するだけでなく、 なぜその施術が必要だったのかを説明できる記録 がより重要になると考えられます。
特に、
- 複数部位への施術が多い
- 長期間の施術が多い
- 頻回な施術が多い
- 同じような負傷パターンの患者が多数いる
- 治癒と新規負傷が繰り返されている
といった施術所では、 請求内容について詳しい確認を受ける可能性があります。
一方、適切な負傷原因の確認や記録、 利用者への説明を行っている施術所にとっては、 審査基準が明確になることがメリットになる可能性もあります。
保険施術から自費施術へ移行する整骨院が増える可能性も
柔道整復療養費の適正化が進むことで、 保険の対象ではない慢性的な肩こりや腰の疲れ、 姿勢や身体のコンディショニングなどについては、 自費サービスとして提供する整骨院・接骨院が今後さらに増える可能性も考えられます。
すでに整骨院・接骨院の中には、 保険施術とは別に、 整体、骨盤調整、姿勢ケア、ストレッチ、トレーニングなどを 自費メニューとして提供している施設もあります。
こうしたサービス自体に問題があるわけではありませんが、 利用者側からすると、 どこまでが保険施術で、どこからが自費施術なのか を分かりやすく説明してもらうことが重要です。
また、自費施術であれば整骨院だけに選択肢を限定する必要はありません。 整体院なども含めて、 自分が求める施術内容や料金と比較したうえで選ぶことができます。
今後さらに見直される可能性があるポイント
2026年度の改定ですべての見直しが終わったわけではありません。
厚生労働省は、今回の改定によって施術や請求の傾向がどのように変化するかを確認したうえで、 今後も必要な対応を検討するとしています。
特に注目したいのは次の点です。
- 2部位を含む複数部位施術の扱い
- 長期かつ頻回施術の基準
- 長期・多部位施術への対応
- 患者調査・患者照会の対象の選び方
- 施術所単位での傾向審査
- 明細書発行のあり方
- オンライン請求導入後のコンピュータチェック
特にオンライン請求が導入されれば、 請求データを用いた傾向分析や審査の標準化が進む可能性があるため、 柔整療養費の審査制度は今後も大きなテーマになりそうです。
同時に、保険施術の対象を明確にし、 それ以外の身体ケアを自費サービスとして提供する動きが広がるのかも注目されます。
整骨院の保険請求・患者照会に関するよくある質問
Q. 今後、整骨院では健康保険が使えなくなるのですか?
そのように決まっているわけではありません。 柔道整復療養費の対象となる負傷については、 引き続き一定の条件で健康保険を利用できます。 今回の見直しは、主に請求内容の適正化や審査方法に関するものです。
Q. 患者照会が届いたら不正を疑われているのですか?
必ずしもそうではありません。 保険者が請求内容を確認するために行う場合があります。 自分が実際に受けた施術内容を確認して回答することが大切です。
Q. 長く整骨院へ通うと保険が使えなくなりますか?
長期間通っているという理由だけで直ちに保険が使えなくなるわけではありません。 ただし、長期施術や頻回施術については、 必要性や負傷状況を確認される場合があります。
Q. 2か所以上を施術すると問題がありますか?
複数の負傷が実際に存在する場合もあるため、 2部位以上の施術そのものが問題というわけではありません。 一方で、多部位施術が多い請求については重点的に確認される場合があります。
Q. 「部位転がし」はすべて不正請求なのですか?
新しい負傷が実際に発生する場合もあるため、 負傷部位が変わっただけで不正と判断されるわけではありません。 請求パターンや負傷状況などを含めて個別に確認されます。
Q. 保険施術が終わった後も同じ整骨院に通う必要がありますか?
必ずしも同じ施設に通い続ける必要はありません。 自費施術を希望する場合は、その整骨院の自費メニューだけでなく、 整体院なども含めて、施術内容・時間・料金・施術者の経験などを比較して選ぶことができます。
Q. 全身を施術してほしい場合は整体院へ行ってもいいですか?
自費で身体全体のケアやコンディショニングを希望する場合、 全身の状態を確認して施術する整体院などを選択肢にする方法があります。 ただし施設によって施術内容は大きく異なるため、 料金や施術時間、担当者の経験、施術方針などを確認して選びましょう。
まとめ|今後は「請求の理由」と「保険終了後の選び方」が重要に
2026年7月の柔道整復療養費改定では、 料金だけでなく、多部位・長期・頻回施術や患者照会など、 審査・適正化に関する見直しも進みました。
今後は、患者単位だけでなく、 施術所ごとの請求傾向を分析し、 必要なケースを重点的に審査する方向が強まる可能性があります。
一方で、複数部位への施術や長期間の施術そのものが、 直ちに不適切というわけではありません。
「何回通ったか」「何部位施術したか」だけではなく、 なぜその施術が必要だったのかを説明できることが、 今後さらに重要になっていくと考えられます。
また、ケガが落ち着いて保険施術を終えた後も身体のケアを希望する場合は、 「その整骨院へそのまま自費で通う」だけが選択肢ではありません。
整体院なども含めて、 全身を見てもらえるか、施術時間はどのくらいか、 料金はいくらか、担当者にどのような経験があるのかなどを比較し、 自分の目的に合った施設を選ぶことが大切です。
参考資料
- 厚生労働省 「柔道整復師の施術に係る療養費の改定等について」
- 厚生労働省 「柔道整復師の施術の療養費の適正化への取組について(通知)」の一部改正 (2026年7月30日)
- 厚生労働省 「柔整療養費の被保険者等への照会について」の一部改正 (2026年7月30日)
- 厚生労働省 第35回 社会保障審議会医療保険部会 柔道整復療養費検討専門委員会議事録 (2026年4月30日)
- 厚生労働省 第34回 社会保障審議会医療保険部会 柔道整復療養費検討専門委員会議事録 (2026年3月27日)
※本記事は制度に関する一般的な情報提供を目的としています。 個別の施術が療養費の支給対象となるか、 また患者照会への具体的な対応については、 加入する保険者などへご確認ください。 身体の症状について不安がある場合は、必要に応じて医療機関へご相談ください。
